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【解説】添乗員、ガイド、アシスタントの違いとは【インバウンド】

更新日:2020年10月15日

外国人観光客が日本に年間何千万人も来るようになったみたいなので、いつか外国人を案内するインバウンド観光業で仕事をしたいけど、どんな仕事があるのかわからない人


「外国人観光客を日本国内で案内するには何か資格がいるのかな…。


よく耳にする添乗員、ガイド、アシスタントの違いって何なのかな…。ガイドさんは既にいっぱいいるみたいけど今後もお仕事があるのかな…。」


インバウンド観光業で外国人観光客を案内する仕事をする方法を教えてください。

本記事の内容

  1. インバウンドの観光業でよく耳にする3つの職業の違いについて

  2. インバウンド観光業における各資格・ライセンスの必要性について

この記事を書いている私は、大学でイタリア語を専門に学びました。


その後プロのイタリア語通訳として仕事を始め、イタリアには通算で15年間在住していました。(うち12年間は、本業の会議逐次通訳の仕事に加えて、イタリア人ライセンスガイドさんの通訳(Japanese Speaking Guide)として、一緒に日本人観光客をイタリア国内全土で案内もしていました。) 


国家資格のイタリア語の通訳案内士(通訳ガイド)免許と実用イタリア語検定1級、CILSのC2(最上級レベル)、国内旅程管理主任者の資格を持っています。


近年は爆発的な訪日外国人観光客の増大と共に、主に通訳案内士として年間約200日ぐらいイタリア人観光客のガイディングの仕事を日本全国で行っています。


インバウンドの観光業でよく耳にする3つの職業の違いについて

インバウンドの観光業のお仕事でよく聞く職種に、添乗員、ガイド、アシスタントというものがありますが、観光業の中で働いている人以外にとっては、その違いがあまりクリアでないかもしれませんので、一つずつ見ていきたいと思います。


(1)添乗員とは

添乗員とは今では通称として使用されている言葉で、正式には次の2つの種類と呼び方があります。

  1. 「国内旅程管理主任者」という国内のツアーのみに添乗することができる資格

  2. 「総合旅程管理主任者」という国内と海外のツアーに添乗することができる資格

この2つの資格は、それぞれ2日~3日の座学研修と1~2日のツアー添乗研修を受けることによって得ることができます。


添乗員の資格は、外国人観光客の案内のために特に規定されているものではありませんが、通訳ガイド免許と一緒に取得することが非常に大事な資格になっています。


その理由をお話しすると、国内旅程管理主任者は、もともとは日本人の観光客グループをあらかじめ企画された日本国内の旅程に沿って、安全にそしてスムーズに動かしていくプロフェッショナルのことを指しています。


海外からのお客さんが日本国内を旅行するときに必要な旅程管理業務は、日本人を国内旅行で案内する際に必要な旅程管理業務と、外国語会話の必要性を除いてほとんどすべて同じです。


このため、外国人観光客のガイドの仕事をする上では、通訳案内士の資格と併せて取得することがとても有益な資格と言えます。




(2)ガイドとは

ガイドは、一般に観光ガイドをする人、観光案内をする人という意味ですが、その種類はいくつかあります。


① バスガイド  一般的にはバス会社に所属している女性職員で、以下の業務を担当しています。特に資格は要りません。

  1. 車内でのお客様に対するお世話と観光案内を日本人のお客さんに対して行う。

  2. ドライバーさんと協力してバスの安全な運行を確保するように努める。

中学校や高校の修学旅行等でバスの中で観光案内をしてくれたガイドさんを思い出して頂くとよいと思います。


ほぼ99.9%女性でしたよね。そして、バスがバックするときには、バスの後方に走って行ってドライバーさんの安全確認の補助をしたりもしていましたよね。


あれがバスガイドさんというお仕事です。残念なことに、近年はバスガイドさんを置いているバス会社が減ってきていると言われています。


インバウンドの外国人観光客のグループに、バス会社所属のバスガイドさんが同乗してバス内外で観光案内をすることは通常ありません。

② 通訳ガイド(通訳案内士) これは、全国通訳案内士試験、もしくは地域通訳案内士試験に合格し資格を取得した上で、海外からのお客さんに対して外国語で観光案内を行う公認ガイドのことです。


もともとは、通訳案内士の資格は外国人のお客さんを有償で観光案内する場合は必須で、違反した場合は罰金の対象でもありましたが、現在は法律が改定されて、この資格がなくとも有償で外国人の観光案内をしても罰せられることはなくなりました。


6~7年前からアジアの国々(特に中国、韓国、タイなど)から爆発的に訪日観光客が押し寄せ始めていた頃、ライセンスを持った各国語の通訳ガイドだけではその膨大な需要に数的に対応できなかったのと、ライセンスガイドの報酬が高いがために、安く使える無許可の日本在住外国人や外国人観光客グループの添乗員などに違法に観光案内をさせている事例があちこちで見られていました。


これは私の想像ですが、観光立国を国を挙げて目指していた政府は、上述のような理由のために、この通訳案内士の業務独占廃止に舵を切り、突然津波のように押し寄せ始めた年間数千万人単位の外国人観光客を各旅行会社が合法的にさばけるように、つまり、ライセンスが無くても外国人観光客を有償でガイディングできるように、法律を改定したのではないかと思っています。(重要:通訳案内士の業務独占は廃止されましたが、名称独占はそのまま保たれていますので、通訳ガイドや公認ガイド、またはオフィシャルガイドなどの公認性を示す呼称は、通訳案内士の資格を持っていない人は使用することはできません。)


しかしながら、2019年度の合格率が8.5%の全国通訳案内士試験を突破してしっかりと資格を取ってこの仕事に従事している人にしか、実際はほとんどの日本の主要旅行会社はインバウンドの観光案内の仕事を割り振ってはくれません。


ですから、通訳案内士の業務独占が廃止されたからといって、この資格の価値がなくなったわけではありませんし、むしろ無資格ガイドとの質の差別化が起こり、ライセンスガイドの価値は保持されるだけでなく相対的にはむしろ向上しているとも言えます。


参考リンク 通訳ガイド制度(国土交通省 観光庁) https://www.mlit.go.jp/

ユーキャンの全国通訳案内士<地理・歴史・一般常識・実務> 速習テキスト&予想模試【通訳案内の実務に対応! 】 (ユーキャンの資格試験シリーズ) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/1/25 ユーキャン全国通訳案内士試験研究会 (著, 編集) https://amzn.to/3jXBvRq

通訳案内士イタリア語過去問解説―平成28年度公表問題収録 単行本 – 2017/6/1 法学書院編集部 (編集) https://amzn.to/3iclJSo


(3)アシスタントとは

インバウンドの観光業におけるアシスタントの定義は、はっきりと法律で定められたものはありません。


しかし実際は、アシスタントと呼ばれていても、添乗員の資格や通訳案内士の資格を持っている人が、外国人のお客さんを空港に迎えに行ったり、見送ったりする仕事や、ホテルでのチェックイン、チェックアウトの仕事を行っている場合が多いです。


また、MICEといわれる100名を超えるような大型の特殊なグループが来日する際には、海外からグループに同行している外国人添乗員、通訳ガイドとともに、旅程管理のお手伝い全般をしてくれる方々のことをアシスタントと呼んだりすることもあります。


「MICEとは、Meeting(会議・研修)、Incentive travel(報奨旅行)、Convention(国際会議・学会)、ExhibitionまたはEvent(展示会・イベント)の総称です。」

このように資格なしでできることもあることにはありますが、実際はインバウンドの観光業では、適切な資格を持ってしっかりお仕事をしている人の方が断然多いと思います。


まとめ

インバウンド観光業における各ライセンスの必要性

個人の外国人のお客様の中には、ライセンスを持った通訳案内士は高いから、ちょっと外国語ができる学生さんに道案内として1日同行して欲しいというようなリクエストもたまにあります。


このような場合であれば、無資格のガイドでも需要と供給のバランスが取れているのでよいかもしれません。


しかし、一生に一回しか行けないかもしれない遠い遠い日本に行くんだから、自分の母国語でちゃんと日本の歴史や文化のことをしっかり説明してもらいたいという強い希望をもっておられるお客さんも非常に多いです。


ですから本当にこのインバウンドの観光業界でガイドもしくはアシスタント等の仕事をするのであれば、今すぐではなくとも、ゆくゆくはしっかりと自分がしたいと考える仕事に適した資格の取得を目指す努力は必要だと思います。


通訳ガイドの需要はコロナ禍が過ぎた後は間違いなく戻ってくると思います。


多くの人は、通訳案内士の資格を取得さえすれば、外国人観光客のガイディングの仕事が来て、日本中を案内できるようになると考えていますが、そこは完全に間違っています。


最初にお話ししたように、今は法的にはこの通訳ガイドの資格がなくても外国人の観光案内を有償で行うことができますが、日本の主要旅行会社はまずお仕事を振ってはくれません。

イタリア人観光客に限って言うと、「ライセンスガイド(通訳案内)は全員、日本の歴史、文化、地理、社会、経済などのすべてについて熟知していて、それをきちんとしたイタリア語で解説できる学者のような人間だ。」という大いなる期待をもって日本にやってきています。


現に私がイタリアに住んでいた時に一緒にお仕事をしたイタリアのライセンスガイドさん達は、皆さん本当に歴史学者や美術史学者のように博識で、すごい方たちばかりでした。


実はこれがイタリア人のお客さん達が想像し、日本に来た時に日本人ライセンスガイドにも求めている「ライセンスガイド(通訳案内士)」のレベルなのです。


ですから、実用イタリア語検定準2級から2級未満レベルの試験の難易度と考えられるイタリア語の通訳ガイド資格は、合格がゴールではなく実務的にはやっと通訳ガイドとしてのスタート地点に立ったようなものだと認識する必要があります。


そして、もし自分自身が国内の添乗員付きのツアーに1度も参加したこともないような場合であれば、観光客グループの「旅程管理業務」の「いろは」さえ全く知らない状態です。


このような状態では、個人のお客様数名を旅程管理しながら案内することはかろうじてできても、20人、30人といったグループを安全かつスムーズに引率しながらガイディングすることはまずできません。


ですから、今後増大するインバウンドのイタリア人のお客様のご案内をきちんとしていきたいと考えているのであれば、


全国通訳案内士、

国内旅程管理主任者、

実用イタリア語検定2級以上、


の資格の取得は、少なくとも必須になってくると思います。


そして、もしこれらの資格が徐々にでも取得できていなければ、いくら仕事のパイが今後増えたとしても、追加資格の取得努力をしている他の通訳ガイドさん達と差がどんどんついて行くために自然に淘汰されながら、自分には仕事が全く回ってこないという状況になっていくでしょう。



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